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青森家庭裁判所八戸支部 昭和34年(家イ)16号 審判

申立人 志村ナッ(仮名)

相手方 志村政三(仮名)

主文

一、申立人と相手方とを離婚する。

二、申立人と相手方との間の未成年の子

長男義一(昭和二四年一二月○日生)の親権者を申立人と定め、

二男政二(昭和二六年七月○日生)及び、

四男宏三(昭和三〇年一二月○日生)の親権者を相手方と定める。

三、相手方は、申立人に対し、

○○市大字○○町字○○○三八番

家屋番号同大字第三〇〇番五九号

一、木造木羽葺二階建料理店一棟

建坪 二八坪

二階坪 二八坪

を明け渡せ。

理由

申立人は、主文同趣旨の調停を申し立て、その申立の実情の要旨は次のとおりである。

申立人と相手方とは、昭和三三年七月二日の調停により円満な夫婦生活を継続していく約束で同居したのであつたが、その後において、相手方の行動は一向改まらないので、申立人は、耐えかねて、昭和三三年八月末ごろ長男及び二男の二人を連れて実家に身を寄せ、その後、二人の子供は実家に置いて、市内某飲食店で働いている。しかし、収入が少いので、母子の生活の維持が非常に困難であり、現在相手方が占有している申立人所有の主文第三項記載の店舗を明け渡してもらい、申立人が経営して生活の安定を得たいと思い、昭和三四年二月二四日この事情を相手方に訴えたところ、離婚することその他三月一〇日までに右店舗を明け渡すことを約束したが、口約だけでは安心できないので本申立に及んだ。

と、いうのである。

そこで、調停の経過をみるに、申立人と相手方とが離婚すること、申立人と相手方との間の未成年の子長男義一の親権者を申立人と定め、二男政二及び四男宏三の親権者を相手方と定めることについては、当事者間に異議がないが相手方が申立人の要求する本件料理店一棟を明け渡すことに応じないため本件調停は成立しない。しかし、当事者双方本人審問の結果及び当庁昭和三三年(家)イ第五五号、同年(家)イ第六五号事件の記録によると、申立人は、昭和三三年五月相手方との離婚の調停を申し立て、一たんこれを取り下げ、同月中再度同趣旨の調停を申し立て、その結果、同年七月二日相手方は、申立人に対し、本件料理店を贈与し、同年八月一五日までその所有権移転登記手続をすることの調停が成立したところ、その後、当事者間の折合円満を欠き、更に申立人から本件調停が申し立てられたこと及び申立人が本件調停を申し立てる前の昭和三四年二月六日ごろ当事者間に、主文第一、二項同趣旨及び相手方は、申立人に対し、本件料理店を明け渡すことの合意が成立したこと、しかるに、相手方は、その後、右合意のうち本件料理店を明け渡すことについて難色を示し、本件調停も成立しないでいることを認めることができる。以上の次第であるところ、その他、当事者双方に関する一切の事情をみて、家事審判法第二四条により、調停に代わる審判をするのを相当と認め、主文のとおり審判する。

(家事審判官 野村喜芳)

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